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世田谷ものづくり企業探訪3: 「経堂から地域の暮らしに根ざす循環を。後藤醸造のクラフトビールづくり」

ここ数年「クラフトビール」と呼ばれる、いわゆる大手ビールメーカー以外の地域密着型の小規模な醸造所で造られるビールが人気です。日本各地のバーやコンビニなどでもクラフトビールを見かけるようになってきました。

実は世田谷にも、そんなクラフトビールをオリジナルのレシピで製造し、併設のバーで提供する醸造所があります。

毎回IIDスタッフが世田谷の特色あるものづくり企業を訪問する「世田谷ものづくり探訪」3回目の今回は、世田谷の徒歩3分の路地裏で、作りたてのクラフトビールがその場で味わえる「ブルーパブ(ブリューパブ)」を運営する「後藤醸造」さんを訪問しました。

ちなみに「ブルーパブ(ブリューパブ)」とは、店内に醸造所を併設していて、造りたてのビールが飲める店舗を意味します。

後藤醸造さんへのアクセスですが、まず経堂駅を降りて、線路を越えるような形で南口から北口方面へ向かうと、人気のたい焼き屋さんの老舗「小倉庵」が見えてきます。

その角を右に曲がるとすぐに後藤醸造さんの看板が目に入ります。

店の外には樽を利用したテーブルも。天気の良い日には外でビールを飲めるのでしょうか? これは気持ち良さそう。

さっそく中に入ると、オーナー夫妻である後藤健朗さんとゆきこさんが出迎えてくれました。

IID石塚 「お久しぶりです。IID主催の異業種交流会でケータリングをお願いして以来ですね。最近の後藤醸造さんの近況はいかがでしょうか?」

後藤健朗さん「オープンして今年で3年目になりますが、2018年4月にプロジェクトをスタートした後藤醸造初となる瓶ビール『経堂エール』のクラウドファンディングが、好評のうちにひと段落しました。おかげさまで目標金額の200万を165%も上回る330万以上が集まりました」

IID石塚「その達成率はすごいですね!」

後藤ゆきこさん「その資金で無事に瓶ビール造りに必要な資材などを購入できました。現在もクラウドファンディングのリターン(支援してくれた方へ向けた返礼品・体験イベントなど)を今も実施している最中です」

ちなみにそのクラウドファンディング資金で製造した「経堂エール」は、2019年より世田谷の代表的なお土産が名を連ねる「世田谷みやげ」の仲間入りをしたそうです。

*世田谷みやげ….世田谷区内のさまざまなお店から、世田谷にゆかりのあるお店自慢の逸品を募集し、「世田谷みやげ」として指定しているもの。(公財)世田谷区産業振興公社の主催で、今年で14年目を迎える。

ゆきこさん「クラウドファンディングや世田谷みやげ加入のおかげなのか、このところの地域からの注目度が上がった気がします。小田急沿線の地域誌から掲載依頼が来たり、地域の方がふらっとビールを飲みに来てくれたりもします。そして最近ではドラマ『ワカコ酒』最終回のロケ地にもつかわれたんです」

そんな賑やかな近況を教えてくれた後藤さん夫妻ですが、実はもともとお二人は世田谷区内の東京農業大学のOB・OGでもあります。そんなお二人がビール醸造・ビアーバー経営の道へ入られたのか聞いてみました。

健朗さん「私は農大を出た後、関東日本フードという食肉卸会社に入社しました。そこで勤務になった山梨で7年間営業をしていたのですが、その頃にたまたま飲んだのが、アウトサイダーブルーイングさんという醸造所のクラフトビールでした。

当時はビール工場というと大きなプラントのような所を想像していたのですが、そのアウトサイダーブルーイングさんは、元洋服屋さんの2階建ての建物をDIYして醸造所にしていました。もともと昔からものづくりが好きだっただけに、こういう自分がつくり出した物をお客さんに提供するのもいいなと思ったんですよね。その後生まれることになる自分の娘にも、将来自分がつくった物を見せたい、という思いもありました」

ゆきこさん「そういえば学生の頃から料理でも文化祭の作りものでも、彼は時間さえあれば1人でコツコツやってた気がします。しかも料理もそうですけど、大抵のことは独学でトライしているみたいで。今考えると彼がものづくりの仕事に辿り着くのは自然な流れだったんじゃないでしょうか」

2016年7月に店舗をオープンした後は、ゆきこさんが積極的に交流会に参加してお店の宣伝をしたり、先ほども書いた通り周囲の方に勧められて瓶ビール「経堂エール」を発売する為のクラウドファンディングをしたりと大忙しだったようです。

IID石塚「ちなみにクラウドファンディングに挑戦することになったきっかけはなんだったんでしょうか?」

健朗さん「起業前からクラウドファンディングの存在は知っていました。たしかファーイーストブルーイングさんという醸造所が実施しているのを何かで見かけた時、これはファン作りと広告宣伝の手法なんだ、と理解したことを覚えてます」

IID石塚「それは鋭い視点ですね。クラウドファンディングの本質を捉えていると思います」

健朗さん「そして開業後1年ほどしてから、お客さんや周囲の方々から『瓶ビールやったら?』と言われるようになったんですが、それには瓶詰めの機器などを購入するお金が必要だなと内心思ってました」

ゆきこさん「最初はクラウドファンディングのアイディアを交流会などで周囲に軽い気持ちで話しているうちに、どんどん周りの人に背中を押されるようになり、いつの間にかやらざるを得ない雰囲気に笑。でも告知文章の書き方からリターンの設定、お店の常連さんへの支援の声掛けまで、本当に色んな人に助けられました」

IID石塚「クラウドファンディング中に大変だったことや苦労はありましたか?」

ゆきこさん「苦労というほどのことはなかったのですが、うちの場合はクラウドファンディング支援を締め切った後も、リターンの商品発送や瓶詰め体験イベントなどが一年以上続くわけです。今でも支援してくれた人たちにしっかりお礼を還元できているかどうか、という責任感のようなものはいつも頭のどこかにあったりします」

IID石塚「今後の後藤醸造さんの展望として、やりたいことはありますか?」

健朗さん「クラフトビールに加えて、いつかは自家製のソーセージやパンの部門をスタートしたいと思ってます。後藤醸造がつくったものが、地域の人の暮らしにもっと深く根ざしていくのが夢です」

ゆきこさん「他にも地域との絡みで言うと、ビールを作る過程で出る麦の廃棄物=「モルトかす」を肥料や飼料に使えないかと思って、そのことをブログに書いてみたことがあったんです。そうしたら世田谷区内のある農家さんが取りに来てくれて、実際に肥料として使ってくれています。現在はまだ一軒だけですが、世田谷区内の農家さんに後藤醸造から出たモルトかすを肥料として使ってもらい、その肥料からできた農作物をうちのバーで食べてもらう、というような世田谷区内での循環が作れないかな、と思っています。今回肥料として使ってくれた農家さんは枝豆を育てているみたいですし」


IID石塚「それはとても面白いアイディアだし、地産地消的な仕組みで有意義だと思います。そういった循環が後藤醸造さんを起点に地域へ広がっていくといいですね」

ちなみに後藤醸造さんは、クラフトビールの原材料の一つであるホップも季節によっては世田谷区内の松陰神社や瀬田付近の畑で収穫されたものを使って「世田谷産ホップのクラフトビール」として提供しています。これも仲良くしている二子玉川のクラフトビール醸造所「ふたこ麦麦公社」さんとの縁がきっかけだったとか。

そんな形で、原材料に関しても世田谷区内での企業同士のつながりが生きているようです。

またこの取材中もずっと、過去の反省点やこれからの展開のアイディアについて2人で常に真剣に、でも笑顔で楽しそうにキャッチボールをしている後藤夫妻。

そんな様子を見ていて、後藤醸造さんのこれからの展開のアイディアがまるでビールのように醸造される過程を目の当たりにした気が。そんな後藤醸造さんのアイディア達が地域に根ざしながら、経堂のお店を中心に地域に広がっていくのがますます楽しみになった今回の取材でした。

これからどんどん気候も暖かくなりクラフトビールもおいしい季節になってきます。後藤夫妻が作る世田谷区経堂の地ビールを味わってみたい方は、ぜひ一度経堂のお店に足を運んでみてください。

・後藤醸造

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