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世田谷ものづくり企業探訪1: 「メイドインジャパンの縫製工場を後世に。世田谷DENIM LABが描く縫製職人の未来」

日本の手仕事の職人の減少や高齢化・後継者不足が叫ばれて久しいですが、それはもちろんアパレル業界や縫製職人も例外ではありません。

たとえば、ロール状態の生地から洋服を形にするために、職人は10を超えるミシンと設備を使い分けます。

そして実はこれまで東京にはデニム1本を作る全ての工程を縫える設備を揃えた工場がほぼありませんでした。

その理由はシンプルで、製造コストが原因。

洋服作りをめぐる現場が厳しい価格競争にさらされてきたせいで、服作りの現場は日本から中国に移り、今ではベトナムやカンボジアといった新たな国へ移りつつあります。

そんな状況に対して、アパレル業界を下支えする縫製職人を育てる場や、縫製職人の雇用が地域に生まれる場所を東京に作りたい、そんな思いをもった業界の方々が立ち上げた場が、世田谷の桜新町にあります。

東急田園都市線の桜新町駅北口を出て歩くこと数分。

路地裏の古い建物を改装した場所に、そのデニムサンプル工場「INDICE(アンジーズ) 世田谷DENIM LAB」はひっそりと建っています。

今回は、この場を立ち上げたメンバーである営業部の藤本さん、生産部部長兼技術顧問の戸田さんに話を伺いました。

藤本さんによると、「INDICE」とは、フランス語で「糸口」という意味をもつ言葉。

アパレルの生産現場の環境を少しでも良くなるように思って立ち上げる際にきっかけ(糸口)になればいいと思ってこの名をつけたとか。そしてミシンの針に糸を誘導するパーツも「糸口」と呼ばれるそうなので、その意味もあるそうです。立ち上げたメンバーの思いがこの名前に込められているのが伝わってきます。

ちなみにこのサンプル工房は2017年の7月頃に立ち上げたそうです。築50年以上の元お肉屋さんの建物をスタッフの皆でDIYし、ようやく今のサンプル工房が出来上がりました。

スタッフの採用もできる限り地域の方を採用する為に、人材募集サイトでの公募だけではなく、建物の外にスタッフ募集の貼り紙もしたとか。

「子供がいるお母さんでも働きやすいように、あえて勤務形態もフレキシブルにしているんです」と語る藤本さん。

そしてラボ内の技術指導を一手に引き受けるのが、サンプル縫製職人としての豊富な経験を持つ、戸田美代子さん。

戸田さんはメゾンブランドからアーティストのステージ衣装まで、デザイナーと密な関係での洋服作りを手掛けて40年。ベテラン中のベテランです。

戸田さんは広島にある縫製工場が本来の職場なのですが、この世田谷DENIM LABへの参画にあたって、月に一回ほど広島から通われているとか。戸田さんの事業に対する熱意が伺えます。

そして世田谷DENIM LAB内で全てのデニムの縫製工程をこなせるようにしているのは、縫製業界のもう一つの問題と関連しています。

縫製業界は基本的に分業制。新たなパーツの工程を覚えるのには時間を要するため、ポケット担当はポケットのみ、ベルトループ担当はベルトループのみ。工場で働く縫い手は自分の担当分野だけを何年も何年も縫い続けます。

つまり縫い手は交換可能なオペレーターに過ぎません。

そんな業界にあって、唯一、作り手が一から十まで一人で洋服を縫い上げる「まる縫い」をできる技術を持つのがサンプル制作工場の縫い手。

そんな一から十までを縫い上げる縫い手を育成し、世田谷DENIM LABを卒業した後には縫製業界をの一部を担う人材になってもらう。それも世田谷DENIM LABを立ち上げた目的の一つなんです、と藤本さん、戸田さんの二人は語ってくれました。

そしてお話を伺った後は、戸田さんからデニムを縫う各工程のミシンの説明や、リベットやスナップの付け方などまで丁寧に説明をしていただきました。

一本のデニムを縫いあげる為に、こんなに沢山の工程と機器が必要になるのか、ということをこの訪問であらためて知り、普段履いているデニム1本の価値を再認識しました。

業界の課題を解決する為に、世田谷の地に密着しながら活動する「INDICE 世田谷DENIM LAB」の現場を目にして、世田谷のものづくり応援するIID 世田谷ものづくり学校やFabLab世田谷 としても今後様々な面で応援していきたいと、思った今回の訪問でした。

・INDICE 世田谷DENIM LAB オフィシャルサイト http://indice.okamoto-tex.com/