11/8 (金)

FLSI-Blog

レポート: FabLab Setagaya 3rd Anniversary Meetup!
—ファブラボ世田谷3周年記念交流会—

2019年11月、FabLab Setagaya at IID(ファブラボ世田谷)は、おかげさまでオープン3周年を迎えました。


これまでファブラボ世田谷を支えてくださった皆様同士の「Meetup!(出会い)」をテーマに、近隣を中心としたファブラボ運営者やファブ施設ユーザーを招いたトークイベント・交流会を、11月8日に実施しました。当日は関係者も含め60名を超える方々にお集まりいただきました。

イベントはファブラボ世田谷 ディレクター 鐘居のご挨拶からスタート。

この3年間でファブラボとしての認知度は徐々に上がり、現在登録会員数は1,500名超。
本年度は定期的に開催しているリペアラボが英国 BBCの取材を受け全世界に配信されたこと、さらにインドネシアの大学にファブラボ開設に向けた研修を行ったことについて近況報告がありました。

<第1部>世田谷ユーザー紹介 ロボットプログラミングチーム
Sky Crewのサッカーゲームデモ

Sky Crew は都立小石川中等教育学校 物理研究会の4名からなるチーム。
ロボカップジュニアでは、毎年国内大会を突破。2019年のシドニー世界大会では、サッカーライトウェイト(Soccer Light Weight)世界総合2位を獲得している強豪チームです。

そんな Sky Crew も、当初は手加工でロボット製作をしていたとのこと。


ファブラボ世田谷との出会いにより、製作工程は一気に進化。3Dプリンタ・CNC・レーザー加工機を使用することで、精巧なロボット製作が可能になったそうです。
実際のデモンストレーションでは、2台のロボットを動かしてサッカーの実演も。

ロボットは自律して動くようプログラミングされており、赤外線を発するボールを軽快に追います。
会場の参加者からは若き才能に感嘆の声。
「この仕組みはどうなってるの?」「ここはどうやって作っているの?」などの質問が相次ぎました。

 

<第2部> FabLab運営者座談会
・テーマ「FabLab運営者が語るラボ運営の“リアル”と、これからのFabのゆくえ」

メイカーズムーブメント、3Dプリンターブームなどのデジタルファブリケーションの大きな波が去り、昨年は米Techshopが倒産、今年に入ってからもMaker Faireを主催してきたMaker Mediaの事業停止という暗いニュースが駆け巡りました。
そんな2019年現在、各FabLabの運営当事者はどのようなことを考えているのでしょうか?—

運営者自己紹介

ファブラボ品川 濱中 直樹さん(写真 左)
FabLabになったのは2018年4月から。以前はパーソナルファブリケーションスペース [at.Fab (アトファブ)] として運営。
一級建築士。建築とデザインを手がける合同会社ハマナカデザインスタジオを主宰、ブランドの一つとしてFabLabを運営。
「参加者の皆さんで、セラピストや医療福祉関係の方はいらっしゃいますか?」(→会場の挙手はゼロ)「この現状を変えていきたいです。」
2020年5月にはイベント【2020 TOMメイカソンTOKYO】を開催予定。
クラウドファウンディングを実施中。
https://a-port.asahi.com/projects/2020TOM_MakeathonTKY/

おおたfab 大林 万利子さん(写真 中央)
FabLabとコワークスペースを運営。
3Dプリンターを自社にて開発。3Dプリンターをまずは使ってみて欲しい、そのためには場所が必要ということからFabLabの運営を開始。一昨年11月に蒲田駅前に引っ越し、現在は小学生から70代までの年代が集まる場になっている。
利用者同士が情報共有しながら学び合える環境になっている。最近のブームはKindleでの出版。
著書 「起業副業入門(おおたfab文庫)」Kindle版

ファブラボ燕三条 高橋 秀行さん(写真 右)
新潟 燕三条出身。燕三条がものづくりの街だと社会人になって知る。
ものづくりで伝統を守る=下請けになりがちな現状。さらに事業を継ぐ次世代がいない後継者問題も。
自分自身の経験を地元に還元できないかと思い、創業。三条ものづくり学校に入居した際、PTA(Prototype Thinking Area)立ち上げを手伝う。
2019年4月よりFabLabに。

ファブラボ神田錦町 梅澤 陽明さん
前職はショベルカーの設計士。
ユーザーに近いところで設計したいとの思いから、FabLabに関わり始めたのが2010年。
東ティモールにFabLabを作るのが夢。
FabLabを本業としてから、7周年。いかに仕事を生み出せるか、自走するためにどうするかが目下のテーマ。

ファブラボ品川 林 園子さん
新潟県出身。作業療法士 リハビリテーション専門職。
プロボノ活動で、障がいの有無や年齢に関係なくプログラミングを楽しめる「プログラミングカフェ」を4年ほど主催。
3Dプリンタを購入し、障害を持つ方の暮らしに役立つ道具「自助具」の制作に夢中になり、前職を退職する。福祉に特化した取り組みを行う「ファブラボ品川」の運営に携わるようになる。
デジタルファブリケーションはマウスだけでものづくりに参加でき、だれにとっても親しみやすく、アイディアを形にすることができる。
https://www.thingiverse.com/SONOKO/designs
著書『はじめてでも簡単 ! 3Dプリンタで自助具を作ろう(三輪書店)』

―それぞれのFabLabでは何を収益に持続させているのでしょうか? また、今後取り組みたいことは?

濱中さん

運営は正直、すごく大変です。経営のことだけを考えるとなかなかやれないのではないでしょうか。
現在、合同会社(建築設計とデザイン)を主宰し、その中のブランドの一つとしてFabLabを運営しています。FabLab運営のために他でお金を稼いでおり、稼ぐチームとメセナを小さな会社のなかでやっているような感じでしょうか。
医療・介護事業所向けに、作ったものを販売するだけではなく、作れる人を増やしたい。作る手段があることを知ってほしいし、コミットしてほしいと願っています。そのための支援を事業化してもいます(3Dプリンタレンタル+初期講習 自助具データをオープンソースにする)。サブスクリプションモデル的なことができないかと考えていますが、どのくらい収益化できるか。ここ1〜2年が勝負だと思っています。

大林さん

大変さは同じくらいかなと。
ただ、運営者だけではできないことが、会員さんと一緒だとできるようになるんですね。会員同士の学びがある。
例えばKindleの出版。「パソコンなんでも相談室」で、文章を書いてみたいがパソコンが使えない、という方へ講習したことがきっかけでした。会員さんに小説家の方がいて、文章のライティング教室を開催してみようとなり、ではそこから本を出そう!お小遣い稼ぎにもなるし(笑)、という流れにつながりました。
デジタル機器だけでなく、スマホの使い方やIoTなど、敷居を低くできることを広げていきたいと思っています。

高橋さん

合同会社を運営しており、メイン業務はプロダクトデザインです。
製造業を盛り上げたい、触れ合う人を増やしたいという願いからFabLabを設立しました。設立にあたっては8つの企業に声をかけ、運営メンバーに参画してもらいワークショップなど手伝ってもらっています。始めたい人・試してみたい人に向けた、スタートアップの場としてFabLabを活用してもらいたいと思っています。
現在は会員になれば機器利用が可能。会員の構成は企業と個人が半々くらい。随時セミナーやワークショップ等のイベントを開催しています。

梅澤さん

FabLabとして、2013年に一般社団法人 デジタルファブリケーション協会 を設立しました。「作る人を作る 作る場を作る 作り方を作る」がコンセプト。品川のクリエイティブラウンジ(他、大崎、厚木)、デジタル加工工房 LOFT&Fabなどの企画・運営もおこなっています。
ファブラボ神田錦町では、まずエントリーシートで、どのようなものを製作したいか、世界にどう発信したいか記入してもらうところからスタートします。パスしたプロジェクトはファブラボの機材が利用可能となります。基本的にエントリーしたプロジェクトには僕たちも一緒に取り組んでいます。
クリテイティブ系のユーザーが多く、実験系の製作が多いです。現在進行形のプロジェクトでは、ジェネレーティブデザインを実体化するお手伝いをしています。

鐘居

最初のファブ施設の立ち上げからは5年。マネージメントは一言で言えば大変でした。時期としてはFabLabにして1年程で、売上が追いついてきた。FabLabネットワークに参加したことで得たものは多いです。またウェブ広告を出稿したことも知名度アップに貢献していると思います。

―今後の課題や展開、コミュニティの状況について教えてください。
例えば、FabLabを立ち上げたいと相談されたらどう答えますか?

鐘居

ファブスペース立ち上げを相談された時は、絶対にやめた方がいいと言ってます(笑)

濱中さん

やりたければやれば、と伝えているかな。「やめたほうがいい」はいつでも言えると思っているので。
作業療法(Occupational therapy)的観点でいうと、ものを作っている人は<作業>ができている状態と評価できることが多いようです。やって楽しいことを自分自身どういう位置付けでみるか、意識的にできるようになるといいですね。

大林さん

FabLabは仕事でもなく家でもない、半分お家みたいな感じでしょうか。勉強の場でもなく仕事でもなく、遊びばかりでもない「場」。
お金ではないもの、面白い・くだらないものでも、本気でやっていると周りも巻き込まれていくと思うんですね。このような中間的な位置・場所がこれから重要になるのではないかと。ゆるやかにやっていける場にしたいと思っています。

高橋さん

目指す姿は、学びたい・作りたい人が集まり、商品開発設計を始めたい、といった人たちのプラットフォーム。
ですが、現状はまだ知らない方も多く、会員もなかなか増えてはいません。実際にこの場でどんなものができるのか、「見える化」できるかが今の課題。会員さんの作品や商品をわかりやすく展示し、来たくなるようなところにしたいですね。

林さん

ここ数年、自助具を作ってきました。
福祉関係のみならず、「使う人」と「つくるひと」が、溶け合い重なる場面をもっとつくっていくことで、社会はもっと豊かで優しいものになっていく。道具ももっと愛着があり、「使える」ものになっていく。そう思って活動を続けていきます。

梅澤さん

FabLabの価値を作っていきたいと思っています。最先端の教育や産業に関わっているはずなのに、なぜ苦しいか?というのが本心。もっと産業や事業を作れるのではないかと。
例えばFabLabドバイの求人では、Fabマスター(グローバルではグルと呼ばれます)の月収は100万円相当。これって、グローバルではそのくらいの価値があるということなんですよね。
FabLabの理念や描く未来に共感してくれる企業や一般の方々を創っていかないと、ホビイストの集まりと理解されて終わりになってしまう。どうやってファブラボ活動の価値を生み出すか、重要なテーマです。

ファブラボを運営し、日々ユーザーさんと様々なプロジェクトに取り組んでいるラボ運営者の声。単にデジタルファブリケーションが使える開かれた場としてだけでなく、オープンイノベーションやスタートアップの場、学び合いの場として価値を高めていけるかが、今後重要になっていくように感じました。

その後の自由交流会では、ファブラボユーザーやファブラボ関係者だけでなく会員の方やIIDの入居者、プロジェクトでお世話になっている企業様等、多くの方々と意見交換することができました。
3年という区切りでこのようなイベントを開催し、改めて皆様に支えて頂いてここまで運営してこれたことを再確認しました。5年、10年と続けていけるよう、これからも精進していきます。